【読書記録】私の財産告白 本多静六
本多静六氏の晩年に書かれた一冊です。
日本の過去の成功した投資家が後世に残してくれた著作ということで、興味を惹かれ読み切りました。
この本から、本多先生が強調されていることは以下の2点です。
●月給4分の1天引き貯蓄。
●人生の最大幸福は職業道楽化にある。
以下で、著書のまとめと感想です。
■本多 静六(ほんだ せいろく、慶応2年7月2日(1866年8月11日) - 昭和27(1952年)1月29日)は、日本の林学博士、造園家、株式投資家。日本の「公園の父」といわれる[1]。苦学して東大教授になり、「月給4分の1天引き貯金」を元手に投資で巨万の富を築き、停年と同時に全財産を寄付した[2]。旧名、折原静六。(wikipediaより)
ドイツ留学ののち東大で教鞭を取られ、公園事業を中心に様々な事業にも携わっていた方のようです。
森林開発の事業の話なども本の中で取り上げられていますが、そのあたりは割愛をしたいと思います。
本の前半は投資手法、後半は人生観、仕事観について書かれています。
投資手法に関して、一番興味のあるところではありましたが、細かな内容はあまりなく、書かれていることは以下の通りです。
〇給与の1/4は天引き貯蓄、臨時収入もすべて貯蓄、利子は給与とみなし、1/4を再貯蓄する
〇副業収入を得ることも心がけ、1日1頁の原稿執筆をノルマとする
〇「雪だるまの芯」となった貯蓄で投資を行う。先物買いを好み、買受金として準備をしておく。
〇「2割利食い、10割益半分手放し」
値下がりした銘柄も、引き取り期限前に買値の2割益が出たら転売し利確
長期保有し10割益が出た場合は必ず半分は手放す
〇最初の投資は日本鉄道株→2.5倍で政府買い上げ、その金で秩父の山奥の山林買収→日露戦争後の好景気で70倍で売却
〇最も成功した投資は、震災後の暴落した東京電燈株。悲観されすぎとみて、買い集めた。
○好景気時代には勤倹貯蓄、不景気時代には思い切った投資
○投資の第一主義は安全確実、比較的安全。
細かな投資先や投資理由などは多くなく、ざっくりと上記の内容程度の記載です。
貯蓄をしっかりして、ブログなどで副収入を得る、現代の個人投資家とやっていることは変わらないなと感じました。
山林投資は本多先生の得意分野のため、我々が真似することは難しいことですが、自分の分かる得意分野に投資するという点は、やはり大切な点だと思われます。
もっと投資に関してのことが書かれているものかと思いました。
しかし、その他は本多先生の人生訓が大半を占めており、それが思いの他、今後の人生で参考になりそうな内容でした。
投資本と思って臨みましたが、思わぬ収穫です。
以下、参考になった記述です。
○職業道楽こそが最も幸福
○そのためには、一生涯耐えざる、精神向上の気概、努力奮闘の精神が必要。これを磨くことこそ、幸福は感じられる
○吝嗇と節倹は異なる。出すべきものはちゃんと出し、義理人情を果たすのが節倹。
○金の貸し借りはお互い身を滅ぼす
○金は職業道楽の粕。
○いかなる職務でも、自分自身にその実力さえあれば、与えられて当然の地位は敢然と引き受けるべし
特に職業道楽の精神について、本書の中で最初から最後まで説かれています。
仕事を楽しみ尽くすほどやると、結果名誉や金が粕としてついてくる。
極端な言い回しですが、仕事を好きにすることが究極の幸せという価値観は、非常に共感できるところでした。
また、節倹の精神について、節約しようとすると人付き合いなど疎遠にしてしまうこともありますが、出すべきものは出すということも大切にされていたようです。
あくまで自分の家庭の中で節倹を行う、この辺りは自分の生活の中で思い当たる節があったので、反省すべきところでした。
【まとめ】
明治から昭和を生きた本多静六先生。投資家として、後世にこうした著作を残して、今、こうして手に取ってその教えを受けたのは、何か不思議な気分となりました。
当資本としてでなく、人生訓として非常に参考になる著作でした。